SNSは、距離や時間を超えて人とつながれる便利なコミュニケーションツールです。
しかし、その一方で匿名性に隠れた暴言や誹謗中傷が「デジタル暴力」となり、事件・事故で大切な人を失った遺族をさらに追い詰めています。
2019年の池袋暴走事故で妻と娘を亡くした松永拓也さん、そして2011年の熊本市の事件で娘を亡くした清水誠一郎さんは、SNSによる二次被害の現実を語ります。
当記事では、彼らの証言を通じて、SNS中傷の深刻さと防止策を考えます。
池袋暴走事故遺族・松永拓也さんの訴え
2019年4月、東京・池袋で当時87歳の高齢ドライバーが運転する車が暴走し、松永拓也さんの妻・真菜さん(31歳)と長女・莉子ちゃん(3歳)が亡くなりました。
事故当日、最後に交わした「バイバイ」の言葉と、正午に聞いた「公園で遊んでいる」という声。
それからわずか2時間後、警察からの1本の電話で、人生は一変しました。
「莉子が生まれた時に握った温かい手と、冷たくなった手。そのコントラストが突きつけられました」と松永さんは振り返ります。
絶望のあまり屋上から飛び降りようとしたとき、「お父さんは死なないで」という2人の声が聞こえたといいます。
その思いを胸に、松永さんは記者会見を開き、安全運転の大切さを社会に訴え続けています。
引用:TBS NEWS DIG
遺族をさらに苦しめるSNS中傷の実態
しかし、松永さんの闘いはここで終わりませんでした。
事故後、SNS上には下記のような誹謗中傷が寄せられます。
・「駄々こねるな、事故で妻と娘を亡くしただけだろ」
・「金や反響目当てで闘っている」
・「ナイフで滅多刺しにして命を奪う」
・「池袋暴走事故の松永よ 子どもと妻死んで悲しいか?笑」
警察はこのうち4件を事件として扱い、5人を侮辱罪や脅迫罪などで摘発しました。
松永さんは「物理的には対応しても、心理的には受け取らない努力をしている」と語りますが、それは決して簡単ではありませんでした。
引用:TBS NEWS DIG
熊本事件遺族・清水誠一郎さんのケース
2011年、熊本市で当時3歳だった娘・心(ここ)ちゃんが命を奪われた事件でも、SNSによる2次被害が遺族を苦しめました。
清水誠一郎さんの家族に向けられた書き込みには、
・「なんで生きてるんだ」
・「お前が死ね」
・「3歳の子どもを1人でトイレに行かせた親が悪い」
といった言葉が並びました。
「悪いのは犯人ではなく自分なのか」と苦悩し、家族は外出もできなくなりました。
事件から13年経った今も、清水さんは講演活動を続け、「同じ思いをする人を作りたくない」と訴えています。
引用:TBS NEWS DIG
匿名性がもたらす危険
松永さんは「車とスマホは似ている」と表現します。
車は鉄の塊に守られて気が大きくなり、スマホは画面に守られて相手が“生身の人間”であることを忘れさせます。
匿名性が、時に人の良心を鈍らせ、取り返しのつかない言葉を生み出すのです。
誹謗中傷を防ぐためにできること
政府広報オンラインでは、SNS誹謗中傷を防ぐために次のような方法を推奨しています。
・カッとなってもすぐ送信せず、一度時間を置く
・投稿を見直し、相手がどう感じるかを想像する
・ネットから離れて誰かと話すなど、気分転換をする
これらはシンプルですが、SNSでの加害者にならないための有効な方法です。
70人が参加したシンポジウムでは、ほぼ全員が「投稿前に内容を消した経験がある」と答えており、立ち止まる習慣が重要だとわかります。
ネット上での反応と声
松永さんや清水さんの活動は、ネット上でも賛同や共感の声を集めています。
・「言葉の重さを改めて考えさせられた」
・「匿名でも礼儀を忘れないSNSにしたい」
・「この話をもっと広めるべき」
一方で、誹謗中傷が完全になくなるには時間が掛かるとの意見もあり、社会全体での意識改革が求められています。

まとめ
SNSは人と人をつなぐ素晴らしいツールである一方、その一言が誰かの心を深く傷つけ、時に命を奪う危険もあります。
松永さんが強調するのは、「スマホの向こうには命がある」という当たり前の事実。
自分を大切にし、同じように他人の命も大切にすること。
それが巡り巡って、自分や大切な人を守ることにつながります。
SNSを使う全ての人が、この意識を持つことが求められています。
当記事は以上となります。
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